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緊急アピール・政府提案「ヒトクローン禁止法案」への根本的疑問
ぬで島次郎(2000年11月9日)
政府・与党は、11月7日の衆院本会議及び8日の衆院科学技術委員会における審
議において、「クローンは無性生殖だから法律で禁止する、有性生殖であるヒト胚に
法規制を及ぼす必要はない」旨の質疑・答弁を行っています。
しかし法案のもとになった科学技術会議生命倫理委員会の決定では、無性生殖は人
クローン禁止の複数の理由のうちの一つにすぎません。政府案第1条「目的」にも、
「無性生殖だから禁止」という理由は書かれていません。上記政府・与党の質疑と答
弁は、ヒト胚研究も法規制の対象にしようとする民主党対案を否定するために急浮上
してきた、ためにする議論であり、審議会答申と法案趣旨を逸脱するものです。
そもそも、クローン技術は無性生殖であるから規制し、ヒト胚の扱いは有性生殖
であるためクローン規制とは別とのことだが、無性生殖だとなぜ法規制が必要で、有
性生殖だとなぜ 法規制が必要ないのでしょうか。 政府・与党は、有性生殖であれば
、人の尊厳が侵されるようなことはないと考えているのでしょうか。これは事実にも
国民の意識にも反することです。
たとえば代理母は有性生殖(で作成されたヒト胚の利用の一形態)です。これを禁
止すべきであることは、厚生省のアンケート調査などから、国民の合意はあるといえ
、現に厚生省の審議会でもその線での法規制を検討中です。にもかかわらず政府・与
党は、有性生殖であるか無性生殖であるかを、法規制の対象とするかしないかの線引
きの根拠にできると考えているのでしょうか。これは厚生省の審議会での生殖医療技
術の法規制の検討に反するだけでなく、科学技術会議生命倫理委員会の3月13日の
決定が、「ヒト胚研究全体の検討が早急に必要である」としたことにも反するもので
、政府部内での政策形成が一貫していないといわざるをえません。
政府提案のクローン法案が、このような政府部内の検討とその背景にある国民の意
識に反する、課題の切り捨ての論理の上に成立させられるものであるなら、とうてい
認めることはできません。国会の内外でのさらなる論議を求めます。
以上