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森岡正博『意識通信−ドリームナヴィゲイターの誕生』筑摩書房 目次+本文抜粋
序
T メディアの思想
第一章 意識通信
情報通信から意識通信へ/電話と匿名性/断片人格/自己演出/CBとハンドルネーム/パーティーライン/パソコン通信とチャット/自己演出ともうひとりの私/チャットの中の人間関係/コンピュセックス/統合メディアと匿名性/匿名性のコミュニケーション/顔の存在/二世界問題/失われた他者を求めて/註
第二章 匿名性のコミュニティ
都市と雑踏/ファッション街の視線/雑踏と匿名性のコミュニケーション/二つのコミュニティ/ノン・プレイス・コミュニティ/第三のコミュニティ/匿名性とは何か/意識通信と様々な人間関係/註
第三章 意識交流場
コミュニケーション論/シャノン=ウィーヴァー・モデル/意識交流モデルの開発/意識通信モデル五つの要素/交流人格/触手/人格の形態/自己表現/意識交流/意識の流れの様相/構造/意識交流モデル/モデルの意味/註
U ドリーム・ナヴィゲイター
第四章 社会の夢
深層意識の活性化/グループメディアの深層/社会の無意識/社会の夢/夢の作業/ドリーム・ナヴィゲイター/ホスト介入型グループメディアの進化/註
第五章 意識交流の深層へ
ホスト介入型グループメディアの構造/統合メディアへの展開/意識をデザインする/匿名デザイン通信/ドリーム・ナヴィゲイターの旅
あとがき
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序より抜粋
何年か前におきた事件のことを私は忘れることができない。
ある男が、妊娠した女性の部屋に侵入し、彼女を殺害して、腹をナイフで切り裂いた。男は、腹の中から赤ちゃんをひっぱり出し、そのかわりに、部屋にあったぬいぐるみを詰め込んだ。そして最後に、コードのついた電話機を彼女の腹の中にしまい込んだ。
この事件は、異様な戦慄と、後ろめたいほどの感動を私にもたらした。息絶えた母親と、そのそばで生死の境をさまよっている胎児。そして母親の腹の中に吸い込まれてゆく、一本の電話機のコード。人間の深層に降ろされた電子通信メディア。
もし、この電話機のベルが不意に鳴ったとしたら、それはどんな世界からの声を運んでくるのだろうか。耳に当てた受話器を通して、どのようなメッセージがささやかれるのだろうか。
こうして本書は成立した。際限のない想像力を白日のもとにさらすことで、私はようやく悪夢から解放されるのかもしれない。