作成:森岡正博 |
対論 脳と生命
養老孟司・森岡正博
『対論 脳と生命』
ジャストシステム 1995年4月 全254頁 本体1748円 (元タイトル:対話 生命・科学・未来)
→ちくま学芸文庫 2003年2月 全286頁 本体900円
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『バカの壁』の養老孟司と、オウム事件前夜に、生と死、科学の未来、脳について徹底的に語り尽くした真剣勝負の対論。マニアでなくてもハマる。 ジャストシステム、そう、あの一太郎の編集部門の編集者が、対談の話をもってきた。で、養老孟司さんとならやりたいと言ってみたら、ほんとうに実現してしまった。天下の養老さんと対談本を出せるなんてなんとラッキーなやつ、と思いながら対談に臨んだのだが、なんと当日胃炎になってしまって、おいしそうに学士会館で食事をする彼を前に、私は食パンをちびちびとかじっていたのだった。そのせいもあってか、対談ではずっと押されっぱなし。がんばろうとしたが、胃が痛い(笑)。テープおこしをあとでもらってから、徹底的に手を入れました。養老さんは、ほとんど手を入れませんでした(笑)。で、できあがってみると、けっこういい本に。マニアックな編集者のつけた註も見もの。対談集としては、最高水準までいってるんじゃないのかな。出版と同時にオウム事件がおきた。あれから8年。現代社会の閉塞感は、あのときよりも高まっている。クローン人間など、科学がかかえる問題も、いっそう複雑怪奇になってきた。むしろ、いま読んだほうが、読み応えがあるとさえ言える。 いまから読み返してみると、やはり、オウム事件を生んだあの時期の影響を、二人とも受けまくっている。オウム以前であるのに、「神秘体験」や「空中浮揚」などが、ぽんぽん飛び出している。この対論の後半部分は、ほとんど、「無痛文明論」の内容になっている。都市の中に囲い込まれて、快楽をあてがわれた人間たちは、どうなっていくのか。東大をやめる直前の対論だけに、養老さんのテンションも異様に高かったと思う。 この本の内容も、いまから考えれば、オウム的な雰囲気を先取りしていると言える。初版7000部。直後に1000部増刷しました。ジャストシステムが出版から手を引いて、長らく絶版だったが、2003年2月にちくま学芸文庫より再刊。いま読むとさらに面白い。これもファンの多い一冊です。文庫化に当たって、タイトルが変更となりました。文庫版初版8000部なので、トータルで1万6千部となりました。12月に3刷で、トータル1万9千500部となりました。 筑摩書房 Tel.048-651-0053 Fax.048-666-4648 |
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書評など
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文庫版の解説 八年前の対話だが、いま読み返してみても、古くなったという感じはまったくしない。人間の生と死。そこへと急速に介入しようとしている先端技術。科学の発達によって、人々はほんとうに幸せになったのか。自然の支配に乗り出した科学技術が、今度は人間の生命をも支配しようとしているではないのか。この対話で、繰り返し問われたこれらの問題は、二一世紀になった現在のほうが、より身近で深刻なものとして感じられはしないだろうか。ちくま学芸文庫から再刊されることで、本書は、新しい読者の手にゆだねられる。 目次
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