生命学ホームページ 
ホーム > 著書 > このページ
作成:森岡正博 
掲示板プロフィール著書エッセイ・論文
English Pages | kinokopress.com

著書

 

生命学をひらく ― 自分と向きあう「いのち」の思想 トランスビュー 7月初旬発売 1680円(税込み)

森岡正博

終末期医療、条件付きの愛、ひきこもり、母性と父性、遺伝子操作、無痛化など、現代の「いのち」と「こころ」の問題を、まったく新たな視点から読み解く最良の入門書。生命学のエッセンスがわかる。

森岡のはじめての講演集。いままでの書き下ろしとはまったく違った語り口で、きっと面白く読めると思います。耳から聴くとこういう感じか!というのを、楽しんでみてください。池田晶子「14歳からの哲学」と同じシリーズでの出版です。

 

Amazon.co.jpにて購入する 

 

目次

はじめに >>サンプル

1 いのちのとらえ方 

・・・・そのとき、お医者さんはなかなかつかまりません。家族の人にも聞きづらいでしょう。見まわすと、看護婦さんが身近にいる。夜中に、看護婦さんにぼそっと聞いたりするわけです。「これからどうなるんでしょう」。これは重い問いかけです。想像してみてください。看護婦さんには、この人はあまり長くないとわかっている。そのとき、「これからどうなるんでしょう」と問われるのです。これは非常に重い問いです。言葉だけみれば、「これから六時間後には日が昇りますよ」とか、「明日、総選挙がありますよ」と答えてもいいわけだ。でも、その患者さんが聞いているのはそういうことじゃない。自分がこれから死んでいくことは薄々わかっている。でも、「死ぬ」ってどういうことかわからない。不安や怖さがあるのに聞けない。出てくる言葉は「これからどうなるんでしょう」。・・・・

2 「条件付きの愛」をどう考えるか

・・・・こうして、だんだんこころの中に何かが溜まっていきます。「僕は成績がいいから、親に認めてもらえる、喜んでもらえる。でも、もし僕の名前が全国模試のランキングに載らなくて、学年順位が下の方になったら、親ははたして僕のことを愛してくれるだろうか」。ことのきに、大きな誘惑が出てきます。「受験勉強をやめちゃおうかな。やめたらどうなるだろう」。そこがひとつの分かれ目です。・・・・

3 共感的管理からの脱出

・・・・それに対して「母性管理」はどういうかたちをとるかというと、かなり違います。まず、「母性管理」の場合は誘導的です。「あなたのことは私が決める」という点は同じなのですが、そのときに「あなたは、あなたが本当にしたいことをしていればいいのよ。何をしたいの?」と問うのです。「あなたはどうしたいの。大学に行きたいの、それとも高校を出て働きたいの。あなたはどちらが本当はしたいの。あなたの決めたことは私が支えてあげるから」というかたちをとります。しかしじつは、答えは最初から決まっているのです。・・・・

4 無痛化する社会のゆくえ

・・・・白い帽子をかぶり、大きなマスクをして、まるで医学生のような恰好で、某大学の集中治療室に入れてもらいました。そこで重症の患者さんが治療されているのを、間近で見せてもらいました。それらの経験をもとに脳死の倫理を研究して本を書いたのですが、じつはそのとき、私はもう一つ別種の問題を肌で感じていたのです。・・・・

5 無痛文明と「ひきこもり」

・・・・この中には、「友だちがいない」という人もいるでしょう。私も同じです。今でも友だちはいない。誰とも飲みに行かない。話もしない。休みの日は家でじっとしている。本を読んでいるか、街をぶらぶらしているか。死んだら誰にも発見されず、ミイラになって見つかるのかな、と考えることもあります。「友だちなんて必要ない」と思う部分があるのです。・・・・

6 生命学はなぜ必要か

・・・・他者とは、探し求めて見つかるものではありません。探し求めて見つかるのは、あらかじめわかっているものです。何がどこにあるか、だいたいわかっているところに行って、「あった」と言う。我々はそうやって物を探しますが、他者は、突然、殴られたとか、落ちてきて当たったとか、転んだとか、という出会いたくないかたちで現われる。そのとき、「他者が到来したのだ」と言います。・・・・

7 「死者」のいのちとの対話

・・・・だから、科学的に考えれば、目の前の患者について、ある人はそれを「生きている」と言い、ある人は「死んでいる」と言ったら、どちらかがまちがっていることになります。そのとき、どうすれば正解がわかるか、と考えていくのが科学です。ところが、「いのち」の問題は、はたしてそうなのか。そこがポイントです。「いのち」の問題には、はたして答えが一つしかないのかということです。・・・・

8 「無力化」と戦うために

・・・・まわりのみんなが自分のことを、「あんたなんか、生まれてこなければよかったのに。生きていなければいいのに」という目で見ていたら、どうでしょう。自分は受け容れられていない、自分の存在はみんなに否定されているとわかると、自分はここにいてもいいのだと自己肯定して生きていく力が、骨抜きにされていきます。心理学で「無力化」というのは、このことなのです。・・・・

むすび 自分と向きあう「いのち」の思想

あとがき

トランスビュー社内のページ


 

お電話またはご来店にて要予約先着80名様 (←注意)


 

●予約したほうが安全かも。三省堂とは違う話をします(若干はだぶるだろうけど)。