本ページは「生命学HP」1999年10月12日付のスナップショットです


 

森岡正博『意識通信−ドリームナヴィゲイターの誕生』筑摩書房 目次+本文抜粋

T メディアの思想

第一章 意識通信

第二章 匿名性のコミュニティ 第三章 意識交流場 U ドリーム・ナヴィゲイター

第四章 社会の夢

第五章 意識交流の深層へ あとがき
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序より抜粋

 何年か前におきた事件のことを私は忘れることができない。
 ある男が、妊娠した女性の部屋に侵入し、彼女を殺害して、腹をナイフで切り裂いた。男は、腹の中から赤ちゃんをひっぱり出し、そのかわりに、部屋にあったぬいぐるみを詰め込んだ。そして最後に、コードのついた電話機を彼女の腹の中にしまい込んだ。
 この事件は、異様な戦慄と、後ろめたいほどの感動を私にもたらした。息絶えた母親と、そのそばで生死の境をさまよっている胎児。そして母親の腹の中に吸い込まれてゆく、一本の電話機のコード。人間の深層に降ろされた電子通信メディア。
 もし、この電話機のベルが不意に鳴ったとしたら、それはどんな世界からの声を運んでくるのだろうか。耳に当てた受話器を通して、どのようなメッセージがささやかれるのだろうか。
 こうして本書は成立した。際限のない想像力を白日のもとにさらすことで、私はようやく悪夢から解放されるのかもしれない。



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